2009-01-01から1年間の記事一覧

『動ポモ』再読(3)―スノビズム=シニシズムという短絡

東浩紀の『動物化するポストモダン』(『動ポモ』と略しています)を読み返すシリーズの続きです。 いままでのまとめと今回の論旨 第一回で私は、コジェーヴの日本的スノビズム論には「特攻も歴史的意味を持たない形式的な自殺の一例である」という主張があ…

『東京の条件』のために

『東京の条件』act編 by 岸井大輔岸井さんが『東京の条件』のためにブログに書き抜いたものをまとめてちょっと振り返ってみる。たくさんあるので、初めのところの引用部分だけ引用してみる。こんな感じの引用がたくさん続いていて、その合間に岸井さんの『東…

『東京の条件』act4+

岸井大輔さんが主宰するPLAYWORKSの企画『東京の条件』のact4に参加した。 公式の案内文はこちら。 秋の新作告知 PLAYWORKS#1 『東京の条件』 作・演出 岸井大輔 | PLAYWORKS岸井大輔ブログ - 楽天ブログポタライブについては、今まで何度も書いてきたけど…

実験ユニット「人間ラジオ2」を見た

手塚夏子のアーカイブ Natsuko Tezuka's archive: 人間ラジオ 2 上手客席手前に照明卓があって、照明家(中山奈美)も舞台上の条件を見ながら照明を変えていく。よくあるように天井に照明がつられていて無色の光を投げかけているほか、舞台四面中央に(客席…

終わらない夏が終わる前に/終わらない「エンドレスエイト」--+++

ハルヒの前のアニメ監督が「知っていてとめられなかった自分も責任ある」とか言って謝罪したビデオがYouTubeに流出して話題になってますが、6回目もまた終わらなかった「エンドレスエイト」について終わる前に一言。 終わるまで何も言わない方が良いかとも思…

貴族が詠む万葉集 補遺

『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』の次の一節 天皇から庶民まで詠んだと謳われ、近代に入ってから栄光ある「国民歌集」の地位を与えられた『万葉集』も、実は、奈良時代の貴族によって詠まれたものだと言われている(注九)。 (163頁) について、そ…

カニクラVOL.2「73&88」を見た

柴幸男作演出、男2人女2人の芝居を見てきた。再演の機会もほぼ無いと予想されるが、以下、内容に踏み込んで作品について検討してみたい。カニクラというユニットは、現代日本演劇の、口語的なトレンドの良質な部分をフォローしているようでもある。 作・演出…

害獣芝居の『火學お七』を見た

http://gaijyu.com/main.html 縁あってさそわれてD‐倉庫へ。岸田理生作品が上演されるの見るの初めて。もとの戯曲を見ていないけど、多分、忠実に舞台化しているのだろうと思う。ある種アングラ的な雰囲気のセノグラフィーであり衣装であり演出であり、舞台…

栗原裕一郎の宇野常寛批判について+

大航海の終刊号に載った 栗原裕一郎「『ゼロ年代の想像力』に掲げる「決断主義」は果たして「ニヒリズム」なのか」 を読んだ。大航海 2009年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新書館発売日: 2009/06/05メディア: 雑誌購入: 3人 クリック: 17回この商品を含む…

『満月がなりやまない』雑感/比喩的な形象の航跡

荒木志水さんの公演『満月がなりやまない』見てきました。ダンス関連の偉い人たちがかなり集まって静かに盛り上がっている感じの満員の神楽坂ディープラッツ。 Information - 荒木志水荒木さんは、ダンスが見たいに出たときに素晴らしいと思ってレビューでも…

避難所としての劇場/TAGTAS結成プロジェクトをめぐる雑感

TAGTAS結成プロジェクトとして実施された催しをいくつか見てきた。 座・高円寺 - 「トランス・アバンギャルド・シアター・アソシエーション(TAGTAS)結成プロジェクト」の詳細情報 TAGTAS結成プロジェクト『百年の<大逆>』開催のお知らせ - TAGTASTAGTASの…

WWFes.2009のアーティストキュレーション公演4作

WWFesという、山崎広太さん中心に開かれた、ダンスフェスティバルの公演を見てきた。作家サイドからシーンを活性化しようという試み。4人のダンス作家(artist)が4人の出演者(artiste*1)を推薦して組んだプログラム。 http://bodyartslabo.net/festsub/pr…

WWFes2009の7月11日2公演

http://bodyartslabo.net/festsub/programs/pf.html 岸井さんが参加するっていうので、出かけて、2公演見てきた。森下スタジオの2F。 クジ引きラボ クジ引きでいろんなジャンルの作家を集めて急ごしらえで作品を上演してみようという実験的企画。 3チームに…

リミニ・プロトコル『カール・マルクス:資本論、第一巻』TV録画中継に寄せて+

見ました。録画したのを見直しながら今書いている。 http://www.nhk.or.jp/art/archive/200907/02drama.htmlフェスティバル・トーキョーで上演されたリミニ・プロトコルの『ムネモパーク』がやたら評判良かったので気になっていたんですが*1、私は残念ながら…

林達夫とスノッブな動物

林達夫芸術論集という本が講談社文芸文庫から出た。さっそく図書館に入ったので借りて読んでいる*1。林達夫芸術論集 (講談社文芸文庫 はK 1)作者: 林達夫,高橋英夫出版社/メーカー: 講談社発売日: 2009/06/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 4回この商品…

群々[6:0/作品集]雑感

ダンスがみたい!11参加公演見に行く(マチネ)。 d-倉庫ブログ ダンスがみたい!11もうすぐ開催! ダンスが見たい! : 本日の群々松本梓さんの自作による繊細なソロダンスは、なかなか良いものでした。今後が楽しみです。 岩渕貞太さんには可能性を感じる…

プロペラの「夏の夜の夢」

東京芸術劇場は野田秀樹一色ですね。さて、エドワード・ホール率いる英国の劇団「プロペラ」の来日公演、「夏の夜の夢」を見てきました(ソワレ)。「夏の夜の夢」はこのあいだ新国立劇場で見たばかり。 http://www.nntt.jac.go.jp/season/updata/20000068_2…

還元主義的先入見と諸学の関連について(改稿)

小飼弾がシノドスをバカの集まりと言い切った件にもう一度触れておく。404 Blog Not Found:人文科学者がダメな理由がわかる - 書評 - 日本を変える「知」今回のエントリーの指針を示すなら、こうなる。・誰かをバカと言いたくなったら、必ず、「おまえはバカ…

motto初期型『ホルモン』雑感/ダンスシアター度、ダンス度++

東京ダンスタワーの企画で上演されたmotto初期型の上演作品『ホルモン』を見てきた。東京ダンスタワーは、東京スカイツリーが建設中の町で毎月行われている小さなダンスイベント。初期型+ゲスト出演者ということでmotto初期型という名義なのかな。 明後日本…

『セインツオブ練馬』/戦後偽史と邪気眼妄想-++

はい。ロハ下ルの「セインツオブ練馬」。見てきました。只でもないし、下らない。でも満足して帰ったのは演技が良かったからですね。スロウライダーは一度も見たことなく、山中隆次郎の作・演出を初めてみる。今回「ロハ下ル」に名義を変えて初の舞台という…

『伝わる・揺さぶる!文章を書く』と「通じる」「つながる」

演劇関連の知り合いと一緒に、この本を集中して読んできました。伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)作者: 山田ズーニー出版社/メーカー: PHP研究所発売日: 2001/11/01メディア: 新書購入: 49人 クリック: 391回この商品を含むブログ (226件) を見る 伝わ…

ピナ・バウシュ追悼

たとえば、バランシンやクランコの振付作品を私たちは今でも見ることができるし、ニジンスキーの振付が記譜された譜面から再現されるということもありました。振付作品は残る。私はダンサーよりも振付家が注目された時代にダンスを見始めました。そのことが…

『動物ポモ』再読(2・改)―社会と死

人間は動物である。だから人間が動物化する、といっても別に驚くべきことはない。石が鉱物化すると言っても別に驚くべきことはないように。では、なぜことさら「動物化」という言葉を東浩紀はキーワードにし、問題にするのだろうか。人間には、ただの動物で…

『寛容のオルギア』雑感/衰え方を学ぶ必要+

ヤン・ファーブルの舞台を実に15年ぶりに見てきました。ヨーロッパ人が衰弱においてどう生きようとしているのか、そこから学ぶべきものは多いと思いました。 東京アートパトロール : ヤン・ファーブルの新作「寛容のオルギア」 asahi.com(朝日新聞社):ユ…

『五人姉妹』雑感/現代日本という泥沼であがいてみせること−

吉祥寺シアターにnibrollの矢内原美邦が作・演出・振付した『五人姉妹』を見に行ってきた。基本的には全編モノローグの喜劇*1である。複数人が出てきても構造としてモノローグになっている。全体にノスタルジックな調子だが、現代日本のある種の閉塞感を寓意…

『動物ポモ』再読(1)―Kojeve/Yiyeasu/Snobisme

東浩紀の『動物化するポストモダン』(『動ポモ』と略す)のキーワードとなる「動物化」は、ロシア出身の哲学者アレクサンドル・コジェーヴの議論からヒントを得て用いられた言葉だ。東浩紀自身が、同書の中で『ヘーゲル読解入門』(Introduction a la lectu…

AMNブロガー勉強会、あるいは「スゴイと言ったら伝わらないこと」+

twitterでAMNの企画があると知ってすかさず応募したのだけど、参加した結論のひとつは、やっぱり今はtwitterが旬、ってことだった。あと、Webって結局、きっかけにすぎないんだな、と思った。それだけに、限りなく有意義にも、限りなく重たいものにも、なり…

アルトロジーに触れて(ウルトラブッダギャラクシー/神里雄大)

アルトロジーというイベントに行ってきた。アルトーといっても演劇とか思想に興味が無い人にはわからない名前かもしれないけど、「器官なき身体」という言葉を残してドゥルーズとかデリダとかをインスパイアし、「残酷演劇」という理念を残して20世紀の演劇…

ハイバイ「リサイクルショップ『KOBITO』」

ワンダーランドのクロスレビューに次のような評を寄せた。以下引用。 集団性の演劇、という観点からポツドールと比較できる(集団性を世代や性別に還元する必要はない)。ただし『KOBITO』では個人史の束として集団の歴史性まで捉えている点で、遥か遠くまで…

少年Bとアジカンと

どちらかというと個人的にはキュートンが使った曲として印象に残っているわけですが。 カラオケである人が歌っているのに居合わせて、初めて歌詞の内容を意識した。それで「少年B」のことを思い出した。 歪んだ残像を消し去りたいのは 自分の限界をそこに見…