『伝わる・揺さぶる!文章を書く』と「通じる」「つながる」

演劇関連の知り合いと一緒に、この本を集中して読んできました。

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)

伝わることと、揺さぶることが不可分だからこそ「伝わる・揺さぶる!」という表記がひとまとまりになるのだろう。
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』というタイトル。 - 白鳥のめがね

と初めに書きました。他のズーニーさんの著作も見ながら読んでいて気がついたんですが、「伝わる・揺さぶる!」というキーワードは、他の本では別の言葉に置き換えられていますね。

たとえば、『考えるシート』であれば「つながる」がキーワードです。次のような言葉が前書きに出ています。

自分の言葉で人とつながる!
社会とつながる!

そのためには「自分とつながる」必要がある、という思想がベースにある。自分の意志をつなげていくための「考える方法」を具体的に手ほどきしてくれる本になっています。

考えるシート (講談社+α文庫)

考えるシート (講談社+α文庫)

より、低年齢層というか、初歩的なところで躓きそうな人を対象の中心に据えているという印象です。他のズーニーさんの本を読んでいて、具体的な問いの立て方がなかなか難しいと思った人にはこの本が向いているでしょう。

『伝わる・揺さぶる!文章を書く』では「志望理由(自選状)を書く」という節がありましたが、『考えるシート』にも「志望理由書を書く」というセクションがあります。『考えるシート』の方が考え方が進んでいて、より丁寧な内容になっています。
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』では「職業名」×「テーマ」に留まっていた話が、更に「職業名」×「テーマ」×「実現したい世界観」と、もう一歩踏み込んで考えるべきだ、と述べられています。
「実現したい世界観」まで踏み込む必要に気付かされたという同じエピソードが『おとなの進路教室。』にも紹介されているので、あわせて読むと発見が深まるかもしれません。
自分がなりたい職業につけたとしても、自分が実現したかったことから遠ざかってしまうかもしれない、そのことに十分注意すべきだ、という話は、進路を考える上でとても重要な助言だと思います。

そして、『あなたの話はなぜ「通じない」のか』では、「通じる」がキーワードとなります。

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)

私は、こっちの本を先に読んで、その文庫版後書きで触れられていたのが気になって『伝わる・揺さぶる!文章を書く』を後から手に取ったのですが、まず一冊読むなら『あなたの話はなぜ「通じない」のか』をお勧めします。『〜「通じない」のか』の方が、コミュニケーション全般にトピックを広げて、仕事の場面など、誰かと話を通じさせなければいけない状況で何を気遣うべきなのか、そのためにどんなトレーニングが有効なのか、よりまとまって整理した形で書かれているので、たぶんこちらの方が入りやすいでしょう。繰り返し読む価値がある本だと思います。

「伝わる・揺さぶる」とは「つながる」こと「通じ合う」ことでもある。これらの動詞は、意志が通い合うという同じひとつのことを別々の角度から語る言葉になっているのでしょう。それらの言葉の、重なり合いと違いをじっくり見極めることで、ズーニーさんの考え方がよりはっきりと見えてくるようです。

自分の偽らざる想いを発現させることが、結局は相手に対しても誠実であり、それが相手の心に響き、相手の潜在力を揺り起こしたときにのみ、本当の満足が得られる。そこに人と人が通じ合う歓びがある。:::略:::自分に正直であり、かつ、人とつながっていくという私の戦略を見失うまいと決意した。
伝わる・揺さぶる!文章を書く (PHP新書)(p.220)

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