鰰[hatahata]『動け! 人間!』(「深海魚」)

昨年のりたーんずでは、神里さんと白神さんが一押し二押しの自分だったので、ふたりのユニット鰰はだいぶ楽しみにしていた。鰰ははじめ「神々」という名前で発表されていたけど、それが鰰に変わることも含めて、楽しんでいた。「深海魚」を一回だけみた。
http://hatahata.sitemix.jp/

一緒に見に行ったひとがとても喜んでいて、そのひとはそんなに舞台を見る人ではないので、演技やパフォーマンスのあり方とか、構成や筋立てのあり方だとか、複雑で突飛だったりして、とても親切というわけではなかったけど、伝わる人にはちゃんと伝わる質のものだったのだろうと思う。

僕としては、神里さんと白神さんが組んで、これだけのパフォーマーを集めたら、このくらいにはなるだろうという範囲に収まった舞台だったように思えて、楽しんだけど、冷静だった。

神里さんと白神さんとでは、現状に対してというか現代に対する姿勢というか、アクチュアルさに絶妙な違いがあるような気がする。表面的には、神里さんは切迫感が強くて、白神さんはのんびりしているようにも見える。でも、体感的に現代に向き合っている仕方は、そんな単純な二分法にはおさまらないものがあるのだろう。

いずれにしても、劇場を前提にして、現代的なことをする上で、最適解とはいえないとしても、模範的な回答とは言えるような舞台だったと思う。

これはたぶん、今見ておかないと意味の無いことなのだ。

でも、こういうテイストは、90年代の舞台にもあったよな、という風なことを少し思った。ハイレグジーザスのこととか、時々自動のこととかを思い出したりもした。

とはいえ、先行する物が忘れられているから、新鮮に見えているだけだ、みたいなことが言いたいわけではない。

つまり鰰も、ひとつの王道を行っているし、そういう道は突然ひらけたわけでもないし、直接間接に継承された発想や技法や舞台コンセプトが、しかし手持ちの道具として、まっとうに活用されている。それで十分だということだ。

そういう意味で、こういう類の舞台は、もっと見られて良いだろうと思った。

追記)
澄井葵さんが引用してくれた。考えを触発できたみたいでうれしい。
それだ。 | お腹痛くて2ステップ