2009-01-01から1年間の記事一覧

近代日本語に弔いを 2.01

近代日本語に弔いを 2.0 - 白鳥のめがね を書いたら、次のような反応があった。 「死者は心の中に居る」が常套句である今、弔ふ=死者の靈魂を慰めると云ふ言葉は生きてゐるのか。それともこの場合悲しみの意を表してゐるのか。或は懷かしんでゐるのか。それ…

唐十郎『盲導犬』から帰る−+

唐突だけど表向きまったく関係のない引用から始める。 『音楽のおしえ』もまた、音楽から何らかの人生観や審美的態度、「〜主義」などを引き出そうとする姿勢(例えば、小林秀雄の「モオツァルト」のように)を徹底的に拒否するために書かれているように思わ…

神の裁きと決別するために/管見『コンプレックスドラゴンズ』++−

The end of company またの名を、ジエン社の、『コンプレックスドラゴンズ』という舞台作品を見た。 http://elegirl.net/jiensha/main/archives/146#more-146 これまでまったく噂にも聞いたことがなく、何も知らなかったこの劇団を見に行ってみようと思った…

陳腐さの絶対肯定/『ヘアカットさん』覚書

アゴラ劇場で岡崎藝術座の『ヘアカットさん』を見た。日本社会がこれからさらに困難に直面し負債と可能性のせめぎあうなかでさらに多くの人が苦しむであろうときに、求められるのはこういう演劇だろうと思う。若さと貧しさを肯定する演劇だから、今の若い人…

Snell朗読会に行った

歌人の今橋愛さんと雪舟えまさんが、小説を書いたりエッセイを書いたり、短歌のほかにも俳句を発表してみたり、他の寄稿者からの批評を受けたりと、小雑誌的に面白かったSnellですが、こういうプチ小雑誌ブームみたいな昨今において、ひときはきりりと輝いて…

サ・カ・マ・ル・ン・ドvol. 15「野の宮」を見た

若尾伊佐子さんのソロ公演を久しぶりにみた。テルプシコール。何もない舞台に、奥の方の暗幕をわけて現れたときの第一印象だけど、フリルのついたワンピースの衣装もあまり好きになれなかったし、中空をさぐるような表情もいささか芝居がかっているように思…

古典化と新鮮さの作業/『次の衝突』覚書+

神村恵ソロ公演ということで見た(初日1回目の公演)。素晴らしいダンスだった。 Works – 神村恵 公式サイト神村さんが公演でこんなに踊るのを見たのは初めてだという気がする。たいていのダンス公演というのは、緊張感とか新鮮さが感じられるのが公演のほん…

shelf「私たち死んだものが目覚めたら」雑感/日本近代演劇の批判的継承の不可能さ

shelfの公演「私たち死んだものが目覚めたら」を見た。 shelf | 更新情報 私は矢野さんがやっていることにもともとあまり興味はなかったけど、やっぱり興味を持てないということを再確認したというところだ。今回の舞台も、私にはどのような意義があるのかわ…

ダルカラ、サイコシス 雑感

ダルカラ(DULL-COLORED POP)の4.48 Psychosisを原作にした舞台『心が目を覚ます瞬間〜4.48サイコシスより〜』を見た。 CoRich 『心が目を覚ます瞬間〜4.48サイコシスより〜』私はSarah Kaneに特に思い入れはないし、原作になっているテキストも目にしたこ…

『わが星』とままごとの危機、あるいはセカイ劇場+

柴幸男さんが自分の団体として立ち上げた「ままごと」名義の新作『わが星』を見てきた。 http://www.seinendan.org/jpn/infolinks/infolinks090809.htmlこの作品をみて、柴さんがどこで勝負していくつもりなのか、はっきり見えたような気がする。それは、あ…

近代日本語に弔いを 2.0

去年の年末から春ころにかけて「近代日本語に弔いを」というシリーズ記事を9本書きました。 近代日本語に弔いを(9)−「文(かきことば)」の演劇− - 白鳥のめがね 私のこの散漫なダイアリーにしては、ちょっとばかりintensiveなシリーズになっていた気がす…

佐藤ペチカ×菊地びよ/相良ゆみ 雑感

東京バビロン ダンスセレクション『ポンペイの落書き#03/FINAL』の公演を見に「pit 北/区域」に行った。 http://www.h7.dion.ne.jp/~babylon/black_24.htm 佐藤ペチカさんのダンスを久しぶりに見てみようかと思ったのと、相良ゆみさんは春にディープラッツ…

DANCE FILM VARIATION(G)雑感+

ダンストリエンナーレ トーキョー2009の関連企画として、ダンスの記録映像などが上映されるというので出かけてみた。 DANCE FILM VARIATION見たのは次のプログラム。 ポストモダンダンス 知人が日記に書いていたので、今日一日しか上映しないって限定感につ…

「深淵の明晰」雑感

大橋可也&ダンサーズの公演「深淵の明晰」を見てきた*1。サイトに記録写真や動画などがある。 Kakuya Ohashi and Dancers 大橋可也&ダンサーズ: 「深淵の明晰」東京公演写真次の動画はラストに近いシーン。 このラストシーンの、全員がいっせいに後ろ向きに…

ワークショップの起源と流行

このあいだ、岸井さんの曳舟ロビーについてふれた記事でワークショップという言葉について説明を書いた。 英語圏で工房という意味合いの言葉の転用から派生した言葉で、舞台芸術関連では、短期間の一般向け公開講座といった意味合いで使われることが多いよう…

浦和美園の劇団どくんご+

浦和美園で行われた劇団どくんごの公演は、イオンのショッピングモールが奥に見える原っぱ。駅前のロータリーの外れで行われた。このロケーションで見られたのは、良かったなと思っている。「ただちに犬」の公演では、丹生みほしさん*1のモノローグがクライ…

劇団どくんご「ただちに犬 Deluxe」

この日の夜、テント芝居で全国を旅している劇団どくんごの埼玉公園見てきました。 以下、エウテルペMLとかMixiに書いたことを転載します。ひとりでも多くの人に、この舞台を見る幸せを、味わっていただきたいな、と。http://homepage3.nifty.com/dokungo/ind…

『アーティスト・インの条件』/POTALIVE再考(9)+

岸井さんが曳舟に開いているロビーに出かけて、次のトークを聞いてきた。観客数名。 9月17日(木) 『アーティスト・インの条件』 14時ー18時(出入り自由) 臼井隆志(アーティスト・イン・児童館ディレクター)×岸井大輔(劇作家/playworks主宰)東京都と東京文化…

9月11日はJoe Zawinulの命日です。

フュージョン系のバンドとして有名なWeatherReportの実質的にリーダーだったJoe Zawinulが亡くなってもう二年になりますね。最晩年には、『Z』って雑誌の表紙を飾っていたりして、おお、と思いましたが*1。 ジョー・ザヴィヌル - Wikipedia今年は、ジョー・…

「PRIFIX3」

ゲーム作家で書評も書いて発想法の記事とかも書いていて立命館大学で教えてもいて、岸井大輔さんのプロジェクトでもおなじみの米光一成さんがナカゴーという劇団の公演に出演するのだって告知しているのを見かけて、これは面白そうだと思って見に行ったら、…

CASTAYA project『Are You Experienced?』四日目+

8月25日版の『Are You Experienced?』を見た。LOVEの字を反転したものがキービジュアルとして使われていて、これは東京デスロックの演劇LOVEを連想させますね。冬のサミット2003CASTAYA projectは、ある種匿名ユニットみたいなもので、誰の作品で誰が出演す…

失業日記・帰郷編/小笠原資料館に行く

このダイアリーには明記してこなかったけど、春先にリストラにあって失業した。そのことを実家の母にはあまりちゃんと説明しないままだったけど、帰郷したときにすこし心配したように見通しはどうかと聞かれたものだ。見通しはなかなか立たない。失業日記#…

初期型の『ThePOP』

アゴラの夏のサミットに参加してる初期型の『ThePOP』を見てきた。 前回ダンスタワー見たときにざっと感想を書いたけど、今回も、基本的には変わらない印象。 男性キャストは基本的に全裸で局部を手で握って隠してたりとか、またにはさんでかくしてたりとか…

平松れい子演出の The Vagina Monologues/穏やかである政治性+

ヴァギナ・モノローグを手話を交えて上演する、という企画があるということで、見てきた。翻訳担当の小澤さんが案内をくれたのだった。タイトルからは暴露的な過激さがあるのかと連想してしまうけど、むしろ舞台は穏やかな優しさに満ちていて、政治的な問題…

『昏睡』(作:永山智行、演出:神里雄大)-+

初日に見に行った。26日まで。 出演 山内健司 兵藤公美 http://www.seinendan.org/jpn/infolinks/infowakate090626.html 最近は、演劇を見た感想を書くときに、出演者の人への明示的な言及を心がけています。なんとなく、演出家で舞台を語ることに疑問を持た…

DCPOPの「マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」/陳腐さの絶対肯定+

劇団ダルカラードポップ(略してDCPOP)の「マリー・ド・ブランヴィリエ侯爵夫人」を見てきた。前回見た『ショート7』がかなり良かったので期待していたが*1、今回は、とても良くできたまがい物にして真摯に作られた失敗作だと思う。頭で作るタイプの作演出…

「退屈...」長門が夏悔いた*1/終わる「エンドレスエイト」にひと言++

ネット上の感想で「エンドレスエイト」について「こんなに毎週次回を楽しみにしたのは久しぶり」と書いているひとを見かけたけど、僕も、今回のエンドレスエイトを見ていて、子どもの頃「未来少年コナン」を毎週たのしみにしていた感覚をふと思い出したりし…

踊る若松美黄を見る/二度目

初めて踊る若松美黄を見たのは、WDA2000が開催されたとき、フェスティバル開催の責任者だった若松美黄氏が、オープニングのイベントに飛び入り参加して踊りだしたとき。 Wie funktioniert das Internet? | 現代舞踊協会の偉い人でも、こんな自由な発想だった…

ライン京急自主企画 Vol.1

ライン京急の自主企画を見に行った。 http://www.super-deluxe.com/2009/8/4/linekeikyu/ スーパーデラックスに行った。行くのはPMEの『Unrehearsed Beauty』を見に行って以来、およそ6年ぶり。見た順に雑に感想書いておく。忘れきってしまわないうちに(8月…

飴屋法水の『3人いる!』−++

リトルモア地下に初めて行った。飴屋法水演出初めて見た。多田淳之介の戯曲が上演されるの初めて見た*1。8月3日の昼の回。「3人いる!」特設サイト飴屋法水は現代美術の文脈でも注目されていたので、そのせいか、客層としては演劇ばかり見ているのではない人…