和栗由紀夫+上杉貢代

「ダンスがみたい!7」の公演、和栗由紀夫+上杉貢代「神経の秤」を見た(8月5日(金)19:30の回)。

この公演は、ラストーシーン、上杉と和栗の二人がステージの両端からゆっくりと歩み寄っていく場面が全てだった。

すくなくとも私にとっては、上杉の、まったき感受的な場となったかのごときまなざしを差し向けながらの、一歩一歩がふるえる息吹であるような歩みと、和栗の、眼を馬のようにして、硬く引き締まった筋肉をじりじりと駆動させていく歩みとが、互いの気配を緊迫させながら空間を占めてゆく、この音楽抜きのひとときに立ち会えただけで、十分だった。この時間だけを一時間たっぷり味わう事ができたらどれだけ素晴らしかった事だろう。

この最後のシーンが帯びていた時間的質の豊かさに比べたら、二人が互いにソロを舞台に提示し、時にはすれ違ったりもした公演のそれまでの展開は、舞踏バラエティーショーとでもいったおもむきで、確かに鍛え上げられたダンサーにして初めて提示できる質がそこに見出せたとはいっても、緊張はついにある一線を越える事は無かったと思う。

和栗は彫像のような身体を誇示していてそれは見事な造形ではあったけれど、それ以上のものはなく、上杉はその感受力が十分に熟す前に気負った動きが上滑りしているような時間が長かったように思われたのだ。

公演にあわせて思ったこと思い出したことを二つ。