「キレなかった14才♥りたーんず」コンプリート

http://kr-14.jp/kr-14web/の参加6作品、今日のマチネで全部見ました。

今日見たのは振付・構成・演出:白神ももこ(モモンガ・コンプレックス) による『すご、くない』。
これが、すばらしかった。6作品見た中では一番感動いたしました。

一言でいえば、ダンスシアター(ドイツ語で言えばタンツテアター)なんですが、僕が『すご、くない』について語るとしたら、ダンスシアター様式の作品が、このテーマで、この演劇祭の中に、今、入っている、その意味について考えることになると思います。余裕があれば、会期中にもう一度みたいくらい、素敵なダンスのシーンがあって、それは終演の時に繰り返されるので、あのマジカルな時間は振付家も気に入っているんだと思う。
演劇でシーンを繰り返すと、意図とか意味が生じますが、ダンスでシーンを繰り返しても、音楽を繰り返すのと同じで、あ、ここ、また見たかったんだよ!そうそう!って感じになりますよね。

あ、今日は、このあとディープラッツまで散歩するので、日暮里の漫画ネット喫茶で書き込んでいますよ。自遊空間さんありがとう。

それから、『すご、くない』に関連して、出演していた太っちょの人が「でぶ学講座」というのをロビーで開いていて、これは、昨日マチネのあとに聞きました。「ただ太っていただけで採用されたみたいにして終わりたくないので、ロビーででぶについて話すことにした」って言っていた。つまり、アイデンティティ・ポリティクス系の話。そんな堅苦しいものじゃなくて、自虐ネタ交えつつの体験的でぶ論だったんだけど、それなりにデブの語源とか、定義とかも踏まえつつ、まとまった話になっていましたよ。

『すご、くない』は、ダンスの技術が無いと思われる男性出演者が5人と、わりと踊れる女性がひとり、振付家は女性、という感じで、ここにはジェンダーがらみの問題というのも無視できないものだと思う。
ダンスシアターとしてとてもコミカルで、日常的な語りや動きの延長上に、等身大のテーマを舞台に載せている感じではあって、ことさらコワダカというわけではないのだけど、デブの問題も含めて、政治的に読み解くべきモチーフをいろいろ含んでいたと思います。

そういう意味では、今回の企画の中に、この作品が入っていたことは、とても重要だし、すばらしいことだったと思う。
『すご、くない』を見た感動は、素直に、すぐに、書き残しておきたい、そう思ってネットカフェにもぐりこんだ次第。
最終日しか席が残ってないみたいだけど(もう△印ですけど)見逃すな!

昨日の昼みた、『グァラニー 〜時間がいっぱい』 作・演出:神里雄大(岡崎藝術座) もかなりよかった。これは、もうあからさまに政治的な作品で、パラグアイと日本、そこを行き来する日本人、その差異から見える、異化される日本(東京)の日常、というかね。こっちの作品のストレートなメッセージにも、感動しました。この作品についても、後日ゆっくり文章にまとめるつもりです。

フェスティバル全体の企画の趣旨はこちら。
http://kr-14.jp/kr-14web/kikaku.html
それで、関連企画の岸井さんの試みも触媒として作用しているんだとおもうけど、「でぶ学」もしかりで、ロビーでの企画もいろいろ生まれている様子。フリーペーパーも生まれたりとかしていて、これは通いつめるべきフェスティバルになってますね。なんか、アヴィニヨンの演劇祭に行ったときの雰囲気を思い出す。まあ、規模は比較にならないけど、雰囲気としては、同じですね。
フェスティバル全体についても、また別に、振り返って文章化します。これは、このブログとは別に出す予定。
6作品全部、見る価値があり、すべての作品が、「キレなかった14才」というテーマに正面からとりくんでいて、そして、まったく別のスタイルから、まったく別の切り口で、作品を提示している。フェスティバル全体として、まず、高く評価されるべきですね。その上で、単に誉めるだけでは終わらない、考察が、求められるのでしょう。

フェスティバル参加作品については、すでに3作品レビューをアップしてます。
『アントン、猫、クリ』+ - 白鳥のめがね
『学芸会レーベル』+ - 白鳥のめがね
杉原邦生演出『14歳の国』+ - 白鳥のめがね

さて、ここまで読んで、1作品まだ言及されていないものがあったことに、みなさんお気づきですね。
そう、柴さんの『少年B』について何も言っていなかった。

柴さんについては、以前「御前会議」を見たときにも酷評したわけですが、
青年団若手自主企画「御前会議」 - 白鳥のめがね
今回も、劇作レベルで考えると、ワーストは『少年B』になります(演技はすばらしかった!ので、演出は良かったのだろう)。
どう書くべきか、一番悩んでいます。そういう意味では、一番、問題作。岸井さんがこのフェスティバルについて考えている問題意識とも重なるのだろうけど・・・・・・。
http://kr-14.jp/kr-14web/2009/04/post-19.html

『少年B』の中身のなさは、『14歳の国』の空虚さとはまったく別の水準にあると思う。それゆえに、より、問題の根は深いと思う。

でも、それだけ、日本の演劇はいったい何だったのか?という問題に、いちばん歴史の根の奥にまでからんでいるのは『少年B』だった、と言えるとも、思うのです。

多分、残り3作品についてのレビューをアップできるのは、連休明けになると思うのだけど、ゆっくり考えたいと思います。