「百軒のミセ」を記録する

「百軒のミセ」はなんだったかについて考えている。参考資料として、POTALIVEを船橋に呼んだ下山さんが「百軒のミセ」関連で書いたエントリーをまとめておきます。

ポタライブの前の腹ごしらえは、岸井さんオススメのカレーのお店「フラヌール」。

登戸、向島、渡良瀬etc.地域コミュニティを舞台にアート活動を行う人は、皆さま仲間だと思ってる僕は、これらのアートプロジェクトを観に行くとき、なるべくその地で買い物や食事をし、「今日は〇〇プロジェクトを観に千葉から来たんですよ〜」などと、側方支援することにしてます(笑)
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フラヌールさんは、「百軒のミセ」にかなりシンパシーを抱いて下さってるようでした。
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フラヌール。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

百軒のミセ: 『フラヌール』 (カレー屋)

私たちは、下山さんがカレーを食べている様子を横目にカレーを食べていた。そしたら岸井さんがトイレを借りに来たりした。

【ミセ♯32】「play away」
岸井大輔、河村美雪、伊東沙保によるパフォーマンス。
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3人のアーティストが、表現についておしゃべりする。
基本、ただそれだけ。
だけど、街から作品の創る岸井さん、インタビューショウの河村さん、そしてプロフェッショナルの俳優・伊東さんと、ただではすまないメンバーのツッコミは、クリエーションのプロセスの公開そのものとなってきます。
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優秀なアーティストがいるだけで、場がスペシャルなものに変容するミラクルに感嘆の60分でした。
「play away」。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

百軒のミセ: 『play away』 岸井+河村+伊東 (パフォーマンス)


ポタライブ神泉編vol.1「百軒のミセ」
【ミセ#11】『まちあるきおどり』 木室要一 (舞踊)

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観客は、どんな見方をしてもOK。
遠くから観たり、近くでガン見したり、一緒に歩いてみたり。

気づいたんですが、街中では、何かを「注視する」ということはフツーはしません。
街中でパフォーマンスを観てる観客は、通行人からしたら十分「変な人」であり、「観られる側」になってしまいます。

それはさておき、百軒店の路上で踊り、転げ回る木室さんを観ながら、僕もまた路上で座ったり走りで、ダンスを観たというより、「ああ、遊んだ!」という感じです。

木室要一「まちあるきおどり」。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

【ミセ#18】『目覚め』チョウソンハ
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インフォメーションセンターに集合した観客は、白塗りに女物の着物を羽織ったチョウソンハに促され、「電車ごっこ」に参加させられます。
ロープの輪の「電車」は、百軒店をノロノロと進み、外れにある駐車場に到着。
チョウソンハは、巨木にするすると登り、木の上でのパフォーマンスが始まります。

気違いのような、精霊のような、鬼のような、神のようなパフォーマンスでした。

もはやアートなどではなく、「霊験あらたか」という形容がピッタリの顕現でした。
見ると病気とか治りそうな。

現代演劇がつまらないのは、「人間」しか出てこないから。
自分以外の存在、さらには人間以外の存在に変容することが、「演ずる」という行為の意義なのに、現代演劇では、人間の演技のうちの5%くらいしか使っていないように見えます。
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チョウソンハ「目覚め」。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎


チョウソンハ「目覚め」スペサル写真集:ぼくのミステリな備忘ログ

ポタライブ神泉編vol.1「百軒のミセ」
【ミセ#57−ミセ#64】ポタライブプロトタイプスG

アーティスト・岸井大輔の偉大な点は、ポタライブという演劇システムを創り出したことです。
岸井さんと初めて会った8年ほど前、ちょうどポタライブを始めた時、「能や歌舞伎のように、ポタライブという様式を確立したい」とおっしゃってたのを覚えています。
今日観た「ポタライブプロトタイプス」は、システムとしてのポタライブの成り立ちが良く分かると同時に、心揺さぶられる体験となりました。
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各キャストが持ち寄った一人ポタライブは、正直あまり面白いものではありません。
投票で選ばれた2作品に、キャストが加わって改めて上演された2つポタライブは、まさに血が通ったものとなり、夕刻の陽光や風までもを操り、観客を含めてまるで映画のようなビジュアルインパクトを与えてくれました。
システムとしてのポタライブ。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

ポタライブプロトタイプスG

【ミセ#36】演劇『文(かきことば)』
作:岸井大輔
出演:青山るりこ 伊東沙保 木引優子
使用テキスト:夏目漱石夢十夜』より第一夜・第四夜・第七夜

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3人のパフォーマーがそれぞれ「夢十夜」を1章ずつムーブメントをつけて語るという、アバンギャルドな作品です。

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以前、岸井さんに「現代演劇がつまらないのは、現代口語体日本語のせいではないか?」と聞いたことがあります。
私たちが話している現代の日本語は、個人のメンタリティを表現するのには向いていますが、個人を超えた「歴史」や、人間を超えた「神や霊・魑魅魍魎」などを表現するにはスケールが小さすぎる。
よって現代演劇には自分と似たような人間しか出てこないんだよー。
というようなお話をしたと思います。
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文(かきことば)。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

補足説明しておくと、「文(かきことば)」は、ポタライブではなく、別系統に位置付く演劇スタイルです*1。ただし、プロトタイプスで披露されたミニポタライブが「百軒のミセ」の一部だったように、「文(かきことば)」が「百軒のミセ」の一部となっていて、その全体がポタライブと呼ばれていた、その事実について考えてみる必要はあります。

さらに知りたい人は、中橋さんの記録もあわせてチェックのこと。
potalive「百軒のミセ」初日の様子:ぼくのミステリな備忘ログ


あと、「百軒のミセ」が参加していた百軒店まつり、の企画に下山さんも参加している。

百軒店まつり まちづくり座談会「今こそ商店街がおもしろい!」

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新宿ゴールデン街、浅草、渋谷百軒店と、都市型コミュニティ活動の担い手による座談会。
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ぼったくりのお店や街娼まで含めて「(街の)危うい部分は残しておいた方がいい」などと商店会会長がなかなか言えるものではありません。
ゴールデン街は、新規に開店するための経費が安いため、若い店主が次々に登場しているそうです。

「ヤクザが怖くて浅草で商売できませんよ」と切り出したのは、御歳70歳の富永さん。
浅草は、今がいちばんの売上だそうです。

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人が伸び伸びパワーを発揮するコミュニティを創るには、「聖と俗」に目配りする必要があります。

聖=歴史、民俗、宗教
俗=経済、風俗、アウトサイダー

これら双方に対する知恵とスキルがないと、まちづくりの取り組みは、いずれ限界に当たることになります。

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ただ、性風俗店が60店もひしめき、麻薬取引なども行われている現在の百軒店は、暴力団の活動が活発で、「いかがわしい存在もまちには大事」などという一般論では片付けられない差し迫った課題に対する答えは、まだありません。
百軒店まつり まちづくり座談会「今こそ商店街がおもしろい!」。: ◎◎◎鳩の目日記◎◎◎

*1:演劇の形式化という発想からどちらも帰結したジャンルではある。ポタライブと文(かきことば)の違いと相関については、たとえば岸井さんのインタビュー記事を読んでもらえばわかるでしょう。http://www.wonderlands.jp/interview/008/index.html