緒形拳追悼

さいきんテレビでみかけているとすごくやつれている印象だったので、やっぱり闘病されていたのか、と思いました。

緒形拳さんというと、まず、『復讐するは我にあり』を思い出します(「楢山節考」はまだ見てない)。ミヤコ蝶々さんはじめ、殺されていく脇役陣もそれぞれ凄みがあるけど、ぎらついて、切羽詰ったところで、前のめりで生きているみたいな緒形拳演じる主人公の突進する肉感みたいなものが印象深い。昔の文芸座でニュース映画見てるシーンとか、山の中でトラックの脇であっさり殺すシーンとか、思い出します。
復讐するは我にあり - Wikipedia

あと、『ゴドーを待ちながら』のエストラゴン役を好演されていて、あれを生で見られたのは幸運だったと思う。ロラン・バルトが、パリでロングランしてたころの『ゴドー待ち』を見た観客はけっこう笑ってたって証言しているけど、悲喜劇(トラジコメディー)と題されている『ゴドー待ち』のコミカルな側面を軽快に舞台にのせてみせた串田演出は、ちょっと悲劇の側面を軽くあしらいすぎって感じもするけど、深刻ぶって難解といわれがちな『ゴドー待ち』の、暇だからおどけるしかないじゃんって感じのテンポ良いヴォードヴィル的側面をきちんと舞台化していて、そんな舞台で、自称元詩人で、ちょっととぼけた感じのエストラゴンをさらっと演じていた緒形さんは茶目っ気たっぷりで、ほんとに即興でふざけているみたいで、とても素敵だった。

名優でありながら、そんな偉そうなそぶりもみせない感じが好きでした。ご冥福をお祈りします。