HUNTER×HUNTER 26巻

 キメラアント編も延々続きますが、あと2巻くらいかけないと話が収束しないよね。来年中には終わらせてほしいものだと思います。
 しかし、HUNTER×HUNTERの伏線の置き方はすごくて、蒔かれたままで刈られてないことがたくさん残っているので、生きているあいだにしっかり完結してほしいものだと思いますが。23巻読み直してみたらフラッタが「ハギャ……いやレオル様」って言い直しているコマがあって、それが26巻でのイカルゴの変装が見破られる場面への伏線になっているのね。仕事が細かいなー。
 さて、26巻の目玉はなんと言っても、ピトーに対する怒りにわれを忘れるゴン、それに対するピトーとキルアの駆け引きの場面でしょうよ。このキャラクター造形とドラマの説得力はすごいわ。なかなかここまでストーリーを練り上げられるひとは、少なくとも今の少年マンガの世界には、いないと思う。ていうか、下手なハリウッドの脚本よりすばらしい。
 少年マンガでいわゆる敵のインフレというのが、強さの比喩表現のエスカレーションに終わってしまいがちなところを、メンタルとロジックの駆け引きってところで戦いを描けているところが群を抜いているわけで。
 ゴンの心の落ち着き先が、相手にぎりぎりの譲歩をする、という、その着地がほんと見事で、そこには作者としての妥協や偽りがないと思います。このレベルが達成されるなら、遅筆も許す、というものです。
 殺す、殺さない、ということが大きなテーマとなっているキメラアント編で、さらっとゼノに「無関係の人間を殺めてしまったかも」とひとりごちさせているのも(憎めないジートゥに対して言わせているところも含めて)、にくいところですね。
 メルエムという名が王につたえられるのかというのも含め、ネテロがいかに王を死に至らしめるのか、王の死を王自身は、そしてコムギは、いかに受け入れるのか、冨樫の着地点を見るのが楽しみです。祝、連載再開(まあ、単行本発売と連載再開をセットにするのが恒例となりつつありますが、いままでそんな少年マンガあっただろうか!?)