チェルフィッチュの『エンジョイ』(3)

今日読んでぐっときた感想について2点ほど。

omo-8さんの感想。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~omo-8/log/200612.html#20061220

第4幕のあり方について

主人公は新宿の漫画喫茶バイトの30代突入トリオ。頭文字をとって年下組に「みかか」と蔑称されている。そんな彼らの焦燥感や閉塞感が繊細かつ決定的に吐露される二幕〜三幕がとにかくすごいことに。特に三幕のみかか男子と契約社員女子の別れ話が、もう……。ごろごろごろーのところ、泣くかとおもった。
で一転、舞台は年下組の「バカップル」たちの日常の肯定(?)で終わってくんだけど、あれ? みかかのさまよえる魂はどこへ?

30代トリオを「主人公」としているあたり(意図的な?)バイアスがかけられていて(必ずしも主人公と言わなくても良いはずなので)、でもこれはやはり世代的なものというか、30代トリオに近い年齢からの見方かなとも思う。

「あれ?」というのは私の思ったことでもあった。たぶん、物語を未完のまま放置することに賭けられたものがあったはずで、omo-8さんもそのあたりに賭けられたものは何かについて暑苦しく語るとしたら何かおっしゃったことだろう。この点の自分なりの結論はhttp://d.hatena.ne.jp/yanoz/20061210/p1 に書いておいたのだけど、もう一度捉えなおしてみたいとも思っている。

傾斜をごろごろ転がっていたのは南波典子さんでしたよね。
http://otocin.littlestar.jp/index.html

「切られた女」として登場した役者が、捨てられる男の話を語りながら、「実は切った女」に重なりそうで、役者が入れ替わって切った女を演じている、という重層的な展開だった。わたしとしては、あまりに舞台造形として直球すぎる気もして、半分醒めて見てしまったところもあったのだけど、これは上演によっても質に違いがあったのかも知れず。あの演出をどう考えるかもひとつ『エンジョイ』評価のポイントだと思う。その点も保留。


もうひとつ。
「横バンジー目線 DX」
http://awamoripop.exblog.jp/m2006-12-01/#4045208
チェルフィッチュを先入観なくはじめてみたという感想。

事前に聞いてはいたが、思い描いている演劇のイメージとの違い、
それが激しくてうろたえた。

(中略)

うろたえて、そんで、話についていこうとした。
構造が複雑で注意して観ていないとすぐに置いていかれる。

んで面白くなってきた、次第になれてきたんだな、これは。
そんで淡々と平熱35.8ぐらいで進んでいって。

最後の最後ですごく怖くなった。
同時に興奮と感動もあったと思う。

(中略)

別に泣ける訳ではないし、誰も死にはしないし、
なのになんでこんなに怖くてこんなに面白いと思う俺ですか?

久々に脳みそがフル回転してる気がする俺です。

やっぱり、濃密な作品経験を率直に語った感想は面白いですね。若い世代の側からの、高齢の観客の観察もあって面白い。

作品の成功とか失敗とか言うことは、単純には言えないよな、と、こういう感想を見ると思いますね。舞台作品というのは基本的に見られない人のほうが多いわけで、見続けている立場はむしろ例外だということはわきまえたほうがいい。作家の表現様式の展開という観点もひとつの見方にすぎないし。。

これは、http://d.hatena.ne.jp/NakanishiB/20061222/1166771109 でも最後のあたりの追記で言われている、「どうにも気になるのは、では「成功する」がということがあるのか(中略)ということです」に関連する何かでした。

とりあえず今日はここまで。宮沢章夫さんの議論にはもうちょっと丁寧に応接しておく必要があるかもしれませんが。