三条会の『S高原から』(1)

三条会の『S高原から』初日を見た。

三条会『S高原から』 平田オリザ 作 関美能留 演出

1月17日(日)14:00/19:00
1月18日(月)19:00
◆会場:下北沢ザ・スズナリ

◆出演:大川潤子、榊原毅、立崎真紀子、橋口久男、中村岳人、渡部友一郎、江戸川卍丸(劇団上田)、桜内結う、山田裕子(第七劇場)、浅倉洋介(風琴工房)、大倉マヤ、小田さやか(Ort-d.d)、工藤真之介、近藤佑子、鈴木智香子(青年団)、永栄正顕

◆チケット料金:前売3,300円、当日3,500円、学生2,500円 ※指定席です
http://homepage2.nifty.com/sanjokai/02.html


三条会を見るのは『ニセS』以来。約4年ぶりか。
『ニセS高原から』を全部見ておいて良かった - 白鳥のめがね

前回見たときは、戯曲から様式が離れすぎてまったく無関係に思えたのが疑問だったわけだけど、今回は、基本的に三条会独自の様式を基点にしながら、いろいろな角度から戯曲自体に迫っているように思った。

詳細は全公演が終わってからあらためて描写しつつ、戯曲と演出との関わり方について考えてみたいと思うのだけど、ひとつポイントになっているのは、戯曲の外側を埋め尽くし解釈を飽和させるような演出だったなということ。戯曲の外は、様々な水準で設定されているようにも思う。

そうした面で、平田オリザの戯曲に対する批評的なレスポンスとして考えてもいろいろ興味深い上演だった。

初日の上演に関しては、前半はすこしぎこちなかった気もするけど、後半は見事な盛り上がりを見せた。
特に、作中で村西とその婚約者の女性(大島)からの伝言を伝えに来る女友達(佐々木)とが面会する場面を演じた中村岳人と近藤祐子は素晴らしかった。中村岳人は、前半あたりでは、いかにも往年の青年団の俳優のような「装われたナチュラル」って感じの雰囲気を見事にかもし出していたけど、この場面ではかなり誇張した演技を、あくまで「装われたナチュラル」っぽい質感の延長線上に置いていたようだし、近藤祐子のテンション高いコケティッシュな存在感には独特の魅力がある。あの場面だけでも一見の価値あり。

その場面は、誰でも知ってるある交響詩を流しながら展開するのだけど、毎度おなじみでお家芸ともいえるクラシックの名曲に載せた場面の構築が今回も見事に決まっていた。曲の展開と緊密に対応した演技の組み立てから、一見恣意的でふざけているような演出も巧みに構築されたものであることがわかる。

戯曲の内側の情景を再現することに奉仕するのではない、戯曲から自立/自律したものとして上演を創造する「演出」という考え方は、20世紀の演劇史において様々に展開されたもので、三条会のスタイルもその系譜に位置付くとみて良いのだろうけど、戯曲に対するアプローチの幅という観点から言って、今回の三条会の上演は、ある種の成熟を感じさせるものだった。