『デボネア・ドライブ』

2008年一番の収穫(マンガに限らず)は朝倉世界一の『デボネア・ドライブ』じゃないかと思った*1

デボネア・ドライブ 1 (BEAM COMIX)

デボネア・ドライブ 1 (BEAM COMIX)

朝倉世界一のギャグセンスとリリカルな部分と、すべてが全開になっている感じで、わー朝倉世界一ってこんなに絵がうまかったっけ、て思った。

『フラン県こわい城』で展開された仲間内の戯れとか、『地獄のサラミちゃん』で展開された夢みたいなお仕事の世界とかは、フィクショナルな世界の中に閉じていて、絵柄としても閉ざされた構図を描いていたようにおもうのだけど、コミックギガに連載されていたようなリリカルすぎる作品が持っていたフランス映画みたいな広がりが、ロードムービー的に日本の実際の地名を描写していくドラマの中で、倒錯も含めて肯定されて、朝倉世界一のレンジのすべてが総合されたみたいに、どこまでも開けてゆくような美しい画面として繰り広げられている。フィクションとして現代日本の風景に覆いかぶさっていくんだ。

朝倉世界一の初期作品を集めてコミックとして比類なく実験的にも奥深いモチーフを潜在させていた『幸福の毛』を読み返してみたくなるくらい、『デボネア・ドライブ』は朝倉世界一が持っていたポテンシャルがすべて繰り出されていると思ったのだけど、『幸福の毛』をどこにしまいこんだかわからなくなってしまった。

幸福の毛

幸福の毛

というか庄司薫が指し示した隘路を抜けているもののひとつという気もしたりとか。

*1:連載開始は2007年10月ってことだけど