『現代短歌分類辞典』(2)

先日書いた、二代にわたって刊行され続けた短歌辞典が、結局その先どうなったのかの話。
http://d.hatena.ne.jp/yanoz/20080303/p1
の続きです。

一生かかって『現代短歌分類辞典』のア行を50巻以上刊行し続けてア行の完結を見ずに死んでしまった父の事業を引き継いだ息子さんは、コンピューターを導入して、父親が残した膨大なカードの整理を進める。

1986に「カ」行の刊行が始まる。 
http://www.bk1.co.jp/product/424507
新装版になり版が大きくなる。

1996年に全巻が完結。
二代にわたった事業が終わる。

なんとなく、紙で出すには最後のタイミングなのかな。今なら電子版で公開しようという方向に話が向かいそうだし。

全部で219巻に及び50万首を超える明治以降の短歌を集めた辞典だというわけだけど、『岩波現代短歌辞典』にあたってみても、特に記載は無いようだ。

そんなに調べて見たわけでもないけど、刊行が開始された趣旨に言われていたように、短歌の実作者が『分類辞典』にあたってみるということにはならなかったようだ。

最後の巻の巻末には、完結させた息子さんの感極まった感じの短歌や詩が載っていて、それを見ると、短歌なり詩なりに対する感覚は、まあ、あまり鋭敏だとも繊細だとも思えない。どこか素人っぽさあふれるもので、権威をこめようとした第一巻に比べると、個人的な感慨に終わってしまったよな、という風な感想を残す。

それで、親子二代が人生をかけた大事業はどうなったかというと、件の辞典は各地の図書館に収蔵されていて、「この短歌は誰のものですか?」といった問い合わせを受けた図書館のレファレンス担当さんには重宝がられているようなのです。

http://www.library.pref.nara.jp/publication/untei/untei68/untei68P5.html
http://www.ndl.go.jp/jp/data/theme/theme_honbun_101081.html

という、そんな短歌史の一面もあるという話でした。

あと、古書に関心を寄せる人の興味も引いているみたいで↓
http://d.hatena.ne.jp/shomotsubugyo/20070903/p2
まあ、刊行された時間と本の厚みであれだけのボリュームがあるのに歴史的存在感というのが全く無かったら悲しすぎるわけですが。

あと、津端修氏はイソラベラって雑誌を主宰してたんだそうで、そのことに触れたページもあった。
「イゾラベラ」(isola bella)…は有名無名の旧文章世界投稿家たちだけの雑誌

「文章世界」って、そういう投稿雑誌があったんですね。近代ジャーナリズムにおける短歌のトポス、みたいな。掘り下げてみるとそれなりに面白いのかもしれません。

そうそう。それから、津端修さんっていろんな人と文通してたみたいで、古書店のサイトとかに名の知れた文学者の書簡として津端さんあてのものが売りに出されていることがあるようだけど、遺族が手放したってことかな。
斉藤史葉書が売れた痕跡
http://b.hatena.ne.jp/entry/7735373