『プーさんの鼻』のプーさん
『プーさんの鼻』を読み進めていた。
このあいだ朝ごはんを食べながらふと、「プーさんというのはぬいぐるみではなくてもいいわけだよな、たとえばプーさんとひそかに呼ばれている男であっても」とか考えた。
この歌集では男は間接的に描かれるのにたいして、作者のこどもはダイレクトに歌われているなんてことを考えているあいだにそんなことを思って、そう思うとあえて地味な一首(だと思うけど)から題名が選ばれた理由が首肯できたような気がしたのだけど、あくまで読みかけている時の思いつきにすぎない。
まあともかく、歌集のタイトルにもえらばれるほどの「プーさんの鼻」というのが、どんな鼻であったにしても、赤ん坊と作者たるシングルマザーの双方にとって、父というものが非対称的に位置していて*1、作者としてはわが子の父親がいかなる人物かを公表しないという事情があってはじめて、「プーさんの鼻」という対象が浮上してくると言えるんじゃないかなあということを考えた。
男の鼻かもしれないという思いつきを経由して、あらためてぬいぐるみの鼻と思ってよむと、なんだかその寂しさみたいなものがよけいにつのるわけだった。
こういうのも曲解かもしれないけれども、なんというか、「手をのばすこと」という言い方には、単なる積極性にはおさまらない欠如の感覚がはりついているような気がするし、「プーさん」という固有名詞にも、フィクションとしてのポピュラーさとうらはらのうつろさがあるような気もする。
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*1:赤ん坊にとっては父親というのは認識しようのないものであるけれど、母親にとっては人工授精とかでもない限り認識しないではいられないものである