メール
K大学のI先生が南仏に2年間という予定の在外研究にでかける直前、Iゼミの合宿の帰りの電車でお別れして以来、I先生とは会っていない。
そのとき、「僕も南仏に留学することになるかもしれないので、そのときはよろしくお願いします」と挨拶した。「君が来てくれたら心強いよ」なんておっしゃってくださって、海外で使うために用意されたメールアドレスを教えていただいた。
なんだかんだあって、私は研究を放棄して、就職した。
I先生にそのことをせめてメールで伝えておかないとな、と思いながら、仕事が決まってからにしようとか、なんとか、なんだかんだと先延ばしにしたまま、ご無沙汰したままになってしまっていた。
そんなある日のことだ。I先生も私も参加していた、研究者向けのMLにI先生の訃報が流れた。急病で亡くなってしまったのだということだった。
普段使わないメールアドレスでMLに参加していたりした事情もあって、私がその訃報を伝えるメールに気がついたのは、先生が亡くなってから一ヶ月近くたってからだった。
メールでつながっていなければ、研究を放棄した私に訃報が届かなかったかもしれない。
手帖に、I先生のメールアドレスが書き残したままにある(釣り好きだった先生が釣り上げたかった魚の種類とサイズにちなんだアドレスだった)。
I先生にメールを送ることはできないままになってしまった。
(2008年7月30日 mixiから転載)