dance colloquium #2

●振付:Pierre Darde(ピエール・ダルド)
●出演:荒木まなみ、蛯子奈緒美、小林美沙緒、昆野まり子、陽かよ子、宮尾安紀乃
http://www.luftzug.net/dc/

モダンダンス(現代舞踊協会系の戦後的なダンス界)とコンテンポラリーダンス(JCDNなどを軸にゆるやかに結ばれつつシーンを作っている最近のダンスの動向)とを結ぼうという企画趣旨がチラシなどでも明示されている。

技術的に優れたダンサーに、コンセプト的に、あるいは、振付の発想において、新しい要素を持ち込もうとすること、あるいは、ダンスの発想を様々に開いていこうとすること。そこで今回召還された振付家が、ピエール・ダルド氏だったわけだ。公演についての散漫な感想を少々記しておこう。

6人の女性ダンサーに振付けられた作品で、それぞれのダンサーは体格の若干の違いによる個性を放っていたとはいえ、その動きの質においては均質な印象が残った。振付作品として、ダンサーに均質な動きを要請するものだったのだろう。スピーディーで運動量の多いダンスがめまぐるしく披露されていく場面では、激しくも滑らかな運動が複雑に折りたたまれては展開されていく様子に視覚をゆだねていく時に固有の悦楽を味わうことができた。もっと平たく言えば、派手でスタイリッシュな動きをかっこいいなあと思って見ていればそれで良いという感じ。そうではない場面もいろいろあったのではあるが。

場面ごとに多様な様式を使い分けた風な構成は80年代以降のダンス/舞台芸術のスペックをフル活用したもの。お決まりの名前を出して言えば、フォーサイスピナ・バウシュが拡張した領域の中に作品が収まっているという印象。時々言葉が使われたり、時々具体的な身振りが組み合わされたりするかと思えば、抽象的で純振付的な造形においても、優美な曲線の運動が予想を裏切るようにジグザグな動きに収束していったりする。単純に言ってしまえば折衷的な作品だ。天井から床へのプロジェクションもあり、音楽は20世紀的な弦楽四重奏という風なものだった。

颯爽とした動きの中に、女性的なコケティッシュさを思わせる身振りがちりばめられていたようにも思い、そういうときには素直に心くすぐられるものがあった。ケレン味たっぷりと言ったところかもしれない。作品全体としては、切れ切れなシーンを見せられた感じで、それぞれの場面はバラエティ豊かに趣向に富んだものだったけれど、それぞれの感興が熟す前に次の場面で別の様式にスライドしていってしまうという感じで、作品全体には散漫な印象が残るのみだった。

21世紀にはモダンダンスの伝統と、バレエ(ダンスクラシック)の伝統とが見事に癒合したアカデミックなダンスがカノン化したレパートリーを携えて世界の高級劇場に行き渡るようになるのだろうか。今の社会がこのまま持続するなら必然的ともおもえるそのダンスの古典化の運動を後押しするような企画だなあと思った。

(9/7に書く。9/10加筆の上投稿)