大橋可也&ダンサーズ「サクリファイス」

ダンスがみたい!7の公演 8/2 公演前のドレスリハーサル(いわゆるゲネプロ)で見る。

大橋可也さんの舞台を見るのは今回初めて。それで、観客を入れることが前提だったとはいえ(一回公演ということで、招待券の人はなるべくリハーサルで見てくれという劇場側からの案内があったのだった)、リハーサルというわけで、本番の緊張とは多少違うものだったのかもしれない。

舞台の最後尾にパイプ椅子が並んでいて、そこに一人座っているダンサーが、出番になると舞台に出てくる。出番じゃない人はそこに座って待機している。出番が終わった人は客席の横を通って楽屋にはける。という風に舞台は進む。

初めは女性ダンサー二人のシーン。一人が狐のお面を被って指パッチン(あれは、もっと由緒正しくはなんと言うのだろうか)しながら小刻みな身振りとステップで四角なラインを辿っていくかと思えば、もう一人はCoccoの歌(「強く儚い者たち」)を、「とーびうーおのーアアチィをくぐーうてー・・・・中略・・・・貴方のお姫様は誰かと腰を振ってるわ」って歌いながらでんぐりがえししている、というオープニング。それが、やがて激しいロック調の曲が極まっていくと、一人が狐のお面のまま激しく垂直ジャンプを繰り返しているかと思えば、もう一人は痙攣したみたいに立ったまま身を反らせて腕を引きつらせていたりしていたと思う(と、もう記憶もあいまいになってしまったが、記憶をあいまいにさせるほどに、ある種図式的な分節を可能にするような、想起の指標になるような振りは無かったのだ)。二人出ていてもデュオというわけでもなく、平行して進行するその隔たっている印象が心に残る。

次はダンサー(男)とダンサー(女)二人のシーン。(女)ダンサーは、なにかのタブレットだろうか小さな白い四角いものを透明な筒状のものからひとつづつとり出してじぶんの周りに線条をなすようにひとつひとつおいていっていつしかそれは四角形を描いている。テリトリーだろうかその領域の中に立ったままで激しい音楽にもかかわらずゆったりとした動きでなにか輪郭をたしかめていたかのような印象がのこっていてこのシーンではフラッシュみたいな特殊な光の効果もつかっていたようにおもうのだけれどそういうことはあいまいな記憶のなかにまぎれてしまって白い破線がくっきりと描いている四角が黒ずくめの劇場の空間のなかに鮮やかに区切り出す領域の際立った様子がまたすっくと立った身体とその動きに独特のアクセントを与えていてそのアクセントが浮き立たせる運動と空間のコントラストだけがはっきりと思い出されてそのまま(男)ダンサーが激しくいろいろと動いている出来事の線とくっきり四角くかこまれた中にくきやかに展開される(女)ダンサーの出来事の線とが交わらないままに劇場の外まで延長していったら素敵なのにとおもったら結局男と女はぶつかって男が女を担いで出て行くことでこのシーンは終わってしまった。

次は、男のダンサーが、点呼とかに使うようなホイッスルを口にくわえてそのまま身を屈めたようなしぐさでぬるぬるぞろぞろとすこしばかり動いて見せてそれでそのまま退場して結局笛ふかないのかなふかないままかなと思っていたら吹かないまま終わってしまって笛くわえてるのにふかないという未然な感覚のままに観客を投げ出して終わらせるというたくらみがあるのかなと思ったら大橋さんが終わりですと挨拶して終わりだった。

リハーサルなので終わりですとかはじまりですとか挨拶があったのだろう。それはそれなりに本番とかリハーサルとか始まるとか終わるとかについて舞台芸術の固有の存在様式というのを考えてみるための材料ではあるだろうがそれはまあ材料として抱えておこう。

リハーサルのメモとして記憶(だけ)から文章をひきずりだしてみたこの未成な文体というのは意図したものだけれどリハーサルの未然感に対応させようと試みた。