朗読千夜一夜の第八夜

水上アートバスを片道見た後、out-loungehttp://www.tcn-catv.ne.jp/~aka/
での朗読イベントに行ってきた。朗読千夜一夜の第八夜。歌人の田中槐と、方法主義者http://aloalo.co.jp/nakazawa/method/index_j.htmlが競演するというので興味をひかれたのだった。

道に迷いかけていたら田上さんが声をかけてくれて、場所がわかった。

天道なおさんが一番手。名前はどこかで拝見していた気がするが、作品はそんなになじみがなかった。あじさいが自生している場所に彼と行ったという感じの連作を、あじさいの鉢植えを前におき椅子に腰掛けて朗読。自作の前に、中原中也の詩(どれか忘れたけど、そんなにベタじゃないもの)を朗読していた。

マイクのセッティングとかがわるくて、はじめかけたところで田中えんじゅさんがマイクを直しに介入。このおせっかいやき具合が田中えんじゅさんの人柄を彷彿とさせると勝手に思った。(なんとなくさんをつけて書いてしまったが、別に何の面識もあるわけがなく)
それでも、ミキシングがまずくて、若干ハウリング気味のまま朗読は続く。若干緊張気味なのか。朗読馴れしていない感じで、繊細な感情のゆれみたいなものがこなれないままむき出されているような印象ではあった。でも、言葉はひっかからないまま流されてしまう感じ。

次に、なぜかビジュアル系な感じのペアが。頭に包帯というか白いゴム入りのサポーターを巻いて口をふさいだ男が閉じ込められた苦悩男風のパントマイム的パフォーマンスを披露し、トランスジェンダーな感じの女性っぽい人が自作の短歌を、マイクを使わないで朗読しているのだがBGMが大きすぎて聞こえない。断片的に聞こえてくる言葉も、レゾンデートルとかウロボロスとか、いかにもベタなカタカナだけであった。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/theart/
このひとだ。短歌ヴァーサス創刊号で作品よんでました。

次に、もう若くは無いという感じの女性が黒いドレスで散文詩的なものを朗読した。詩をつくりはじめて30年と挨拶していた。自分の子供が幼児病棟で時をすごして、医療器具にとりまかれて死んでしまった。妹が子供連れで見舞いにきたりするのが疎ましいという感じの内容だった。松本充代が漫画に書きそうな話だな。比喩がいかにもなので、そんな比喩なら使わなければ良いのにと思う。

休憩のあと、
松井茂
http://www008.upp.so-net.ne.jp/methodpoem/index2.html
の量子詩の朗読。

三人の若い男が、それぞれ松井茂を名乗り、横に並んで決まったルールで足踏みを軽快に繰り返しつつ回れ右をしていったりして、そして、新聞の最高気温最低気温の予想を書き写した量子詩を順番に読んでいくというパフォーマンス。とても面白かった。チェルフィッチュのマンションとセットで上演したらどうだろうかとか妄想する。

次に田中えんじゅ氏。
『短歌パラダイス』ISBN:4004304989 に載ってる写真よりも若々しかった。私は、ほとんどこの本と、穂村弘のごーふるたうんBBSでしか田中さんのことは知らない。

さすがに貫禄があって、済んだ通る声のはっきりとした発音でなされた。梅雨時をモチーフにした連作を会場を暗闇にして朗読。短歌で作品を二度繰り返すという慣行があるらしいのだけど、その理由がよくわかる気がした。作品の映像がくっきりうかびあがる感じ。二度繰り返すときの抑揚の変化のさせかたとかも、ツボを抑えていて、そのぶれが逆に作品の輪郭を際立たせているようにも思えた。

最後に、中ザワヒデキ氏。
http://aloalo.co.jp/nakazawa/index_j.html
助っ人を一人よんで、今まで半分までしか朗読したことがないという「回文的造語から成る文章」を朗読。アルファベットを機械的操作して前後対称な単語を造語し、それを前後対称にならべて作ったながあいセンテンスという代物。意味のない、アラブ語かヘブライ語に聞こえるような妙な音声が続くと、途中で笑いがもれる。ベルクソン的にも説明がつく生を模倣する機械的なものの滑稽さとでもいうか。

途中で本人も間違えたりして、つっかかったりするたびに爆笑がおきるという楽しいパフォーマンスだった。
法主義の作品とか、ギャラリーに展示されたものよりも、パフォーマンスの方が楽しいかもしれない。
キュピキュピとか、キッチュを衒うような作風はどうも好きになれないけど、方法主義のパフォーマンスは断然支持だ。子供と動物には勝てないというのに近いものかもしれない。