土方メモリアル・・・小林・黒沢/室伏・・・

JADE2003の土方メモリアルと銘打った企画を見に行く。いろいろ忙しかったので今回はパスしようかと思っていたのだけど、「今年最大の収穫か」とか「伝説の舞台になるかも」とかと前評判が聞こえてきたこともあり、金銭的な余裕もできたので見に行ってみることにした。40分ばかりの二作品を連続上演。

アウラヒステリカ=エロティーク/1 』
演出・構成:小林嵯峨
出演:小林嵯峨・黒沢美香

土方巽の直弟子である小林嵯峨さんと、石井漠直系で日本のモダンダンスのエリート的存在だったのにNY留学後、アンダーグランドなシーンにもぐったと言う感じの黒沢美香さんの競演、というわけで、いよいよ黒沢美香が舞踏に挑戦か、なんて騒がれ方もしたのだけど、まあ、黒沢美香のソロ公演で舞踏的なニュアンスのものも既にあったしね。

出来上がったものを見たところ、小林、黒沢、それぞれのダンサーのソロ作品の組み合わせを超えるものではなかったなあ、というところ。しかし、小林嵯峨という人は、フェミニンなイメージの枠を超えない人ですね。端整な美しさが恐ろしいものにまでいたるためには、何か仕掛けが必要なのか。

『美貌の青空』
演出・構成:室伏鴻
出演:室伏鴻・林貞之・目黒大路・鈴木ユキオ

室伏鴻のソロ作品を見たときには、微細な動きに力が満ちている感覚があって、それなりに感銘を受けたものだけど、パークタワーホールの広い舞台で見ると、大味に見えました、広い舞台向けの演出だったということもあるのか・・・(神楽坂ディープラッツでしか観たことなかった)。

若手三人を背後に従えてベテランがフロントに立つ、というのも舞踏に限らずありがちなパターンではあるわけですが(マーサ・グラハムだってそうだし)、林さんとか鈴木さんとか、それなりに個性豊かな人たちなんで、どういう風に競演するのかな、と思ったら、結局同質的な身体が並んでしまったという感じで、私としては期待はずれでした。

人の背丈ほどの、長方形の銅板(?)を床にたたきつけたり、背負ったりという演出があって、セノグラフィー的にというか、小道具的にというか、とても効果的だったと思う。裸をさらした男どものたくましい動きと、素材性をさらした物どもの、激しい軋みとがぶつかり合う。

(初出「些末事研究」/再掲2010年3月10日)