マギーマランの拍手は食べられない

南米の社会的現実から構想して、権力関係だとかを舞台化した、という事なんだけど、そういうテーマの説明が無くても良いかな、と思った。

ダイレクトな暴力の表現などはないのだけど、ある種の緊張関係、対立関係みたいなものをモチーフにして、抽象度高く見事に構築された舞台になっていた。フランス現代ダンスの一番手堅い所をみたという感じ。

誰もが思うでしょうけど、舞台を三方から正方形に囲むカラフルなたくさんのテープ状に切れ目が入った幕が壁を作っていて、そこから簾を分けるようにダンサーが出入りするという空間構成もとても面白く、効果的でした。

どういう素材を使ってたのかわからないけど、簾状に分かれたかと思えば、すぐにカラフルなストライプの壁に戻る。こういう着想を、しっかり実現する技術的裏付けが舞台スタッフの間に蓄積されていて、常に新たな素材なんかが模索されているのも、公的な支援が万全になされているヨーロッパの舞台芸術のリッチな所なんだろうな。

(初出「些末事研究」/2010年3月11日再掲)