友情の点呼に答える声

昨夜は、寮の新入生歓迎会だった。珍しく新人の半数を女子が占めていて、男どもが色めき立っているのが面白い。

このあいだ日曜日は畏友、大岡淳の作、演出した中高生主演のミュージカルを見に行ってきた。
とても素晴らしいもので、感想はまたしっかり書きたいと思うが、今年の舞台のなかでもトップになるかもしれないというほど。
もちろん、歌やダンスにつたないところが無いではなかったが、しっかりとした演出や振付、作曲のもとで、中高生達の、自分の力を引き出す喜びに満ち溢れた舞台は、初々しくも感動的だった。

せめて、20世紀の水準にある芸術を中高生に実体験してもらいたいものだ。参加した生徒さんたちは、本当に幸せだったとおもう。

会場で、僕も寄稿した大岡さんの劇団のブックレットを頂く。書かせてもらっただけでありがたいのだが、ちゃんと載っていて安心する。
校正の話もなんもないまま自費出版というので訝っていたのだが、それにはその事情なりがあったのだろうな、ということを劇を見ていて思った。

劇中に登場する高校中退者、中卒者の未成年が作ったベンチャーデザイン会社の作ったという設定で劇中にもでてきたTシャツを終演後会場で販売していたのだが、その傍らにひっそりとそのブックレットも売られていた。

ブックレットの買い手がいたのか知らないが、両者が重なり合っているように思えただけに、中高生の元気な宣伝の声と、劇団スタッフの控えめな姿勢との対照が、なんとも印象深く胸に残った。

劇場のロビーも演劇的な場に転化してしまい、劇場そのものを舞台にしたことの延長で、演劇の終わりを社会に連続させようとする意図もあったのかもしれない。(このへん、後でちゃんと説明しましょう。)

ともかく、川崎市の公共施設にある劇場は、十分に祝福されていたとおもう。

ロビーでばったりダンス方面の知り合いにあって、大野一雄に会いたいと日本にやってきたイタリア出身のパフォーマーと三人で車で帰った。
そのイタリア出身の人が日本語のローマ字表記は、英語のばあいとちがって、「そのまま」読んで正しい発音になる、フランス語と一緒だ、なんて感心しているのが面白い。「ローマ字」というからにはラテン語系の表記という共通性があるのかしらん。

(初出「虹の錯視 第二」/2010年3月15日改稿の上再掲)