タイトルの由来

注釈というのは、例えば古典的な書物の細々とした内容のひとつひとつを検討し、それによってできあがったコメントのことです。本文のいちいちの部分に、さまざまなコメントがさしはさまれて行く。そんな仕方で、日々自分と世界が切り結ぶ場所のそれぞれを考え直して見たい、と思っています。

注釈という言葉は、前から気にかかっていたのだけど、意識するようになったのは、日本の古典文学の専門家である西郷信綱氏の著作「古典の影」(平凡社ライブラリー)に収められているある文章を読んでからです。

そこで西郷氏は、「見ることを学び直し、感じることを学び直すのと同じ意味で、読むことを学び直す」ために注釈という方法を用いる、と語っています(121ページ)。西郷氏のように厳密な「注釈」になるかどうかは分かりませんが、「経験すること」を学び直すような仕方で、折に触れて日々の経験をめぐる文章を書き込んでいこうかな、と思ってます。

(初出「今日の注釈」/2010年3月12日再掲)