『反=日本語論』を読む#1 パスカルと関係代名詞
思い立って蓮實重彦先生の著作の読書メモを書き継いでみようかと思います。こないだ、「『反=日本語論』って美しい書物だな」と書きましたけど、序章のパスカルの話の部分、簡潔にして無駄の無い文章だなと思って、思わず美しいなと思ったのでした。そう思うと、家族の挿話と70年代頃の世界史的条件との交錯する具合とかもとても美しいと思えるようになったのでした。
- 作者: 蓮實重彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1986/03
- メディア: 文庫
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蓮實重彦の文体は、明らかに、フランス語経験無しにはありえないもので、件の本の書き出しのセンテンスも、関係代名詞で話をつないでいくような文章になっていますよね。あたかも、パスカルの「鮮明な輪郭」が形になったかのような複合的な文。
フローベールのフランス語とかどういう風なのかしりませんが、19世紀あたりのフランス語の論述ではワンセンテンス1ページとかきっとざらに出てくるのでしょう。私もコントの長たらしい文章とか演習で読まされたことを思い出しますが。
ところで、蓮實文体がフランス語的であることを東浩紀が指摘していたらしいので以下引用。
東:そうですね、例えば蓮實重彦文体ってあるでしょう。あれは僕の考えでは、フランス語の条件法をあるやり方で翻訳する、新しい翻訳文体なんですけどね。それで、ああいう助動詞が肥大化した日本語の文体は欧米では通用しない、とかかつて柄谷行人は言っていたわけですよ。それは確かにそうかもしれないですけどね、しかしかといって、蓮實文体の問題が日本特殊の話だとは言えない。
東浩紀トークライブ@つくば
とりあえず、条件法の話はスルーしますが、学生時代、蓮實重彦の文章を呪文みたいと言った人がいて、そういうこという人は、蓮實重彦の文章のロジカルな構造を辿れていないだけのことと思いますが、フランス語を読んだり書いたり話したりするロジックが蓮實先生の文体を裏打ちしているってことをまず確認。