はばたきとまばたき

正岡豊さんの第一歌集は『四月の魚』だった(『短歌ヴァーサス』の6号にまるごと収録されている)。

トークショーで言及されているのを聞くまで「四月のさかな」と読むのだとおもっていたけど、「四月のうお」と読むのらしい。フランス語で言う、エイプリルフールのことですね。

『四月の魚』から一首目を引用。

 夢のすべてが南へかえりおえたころまばたきをする冬の翼よ


こうして自分でキーボードで打ち込んでみて初めて気がつくのだけど、ひらがなの使い方が独特だ。この一首の場合は、漢字で表記された四語をひきたたせるために、それ以外をひらがなに開いているのだと思われる。冬と南が対照されているのは明白なので、すると、夢と翼が対比されていることになる。

それで、「羽ばたき」の間違いかと思って短歌ヴァーサス6号(でしか件の歌集を持っていないのだけど)を確認してみたらやっぱり「まばたき」だった。この重ね合わせもひらがな表記だからこそ有効に機能している。

まばたきとはばたきが重ねあわされていることがわかると、夢と翼がまぶたにおいて交錯するという構成になっていることが理解される。引用するまでこんな簡単なことに気がつかなかった。
やはり書くという運動の感覚がないと読めないんだな。

解釈はここから始まる。