高校教師ユビュ

プレイヤード版のジャリ全集(フランスの出版社・ガリマール社から出てる)第一巻に収録されている『ユビュ王』の登場人物一覧を見ると、ユビュおやじ(Pere Ubu)のところに注がついていて、それを読むと、ユビュっていう名前は、ジャリがリセ(日本なら高校にあたる)の学生だったときの物理教師、エベールのもじりである、という事が解説してある。ユビュ王って、もともと学校の先生をからかうために生徒がノリで書いたものが原型になってるなんて事情も解説されている。

まあ、もちろん、ジャリが原ユビュを『ユビュ王』として演劇史に残る事件に仕立てたっていきさつもあるわけですが・・・。

ちなみに、プレイヤード版では、「うんこったれ」とか訳されてるユビュおやじの最初の台詞「Merdre!」にも注がつけてあって、これ、綴りが普通の「うんこ」という単語(Merde )とは違うってわけでいろいろ議論が重ねられていて、ラカンのエクリにはかくかくの議論があり、などなどの詳細な注釈がなされている。(まあ、僕のフランス語力では、ちらっと読みかじるだけで精一杯ではあるのですが・・・。)

フランスの演劇っていうのは、そういう知的蓄積の上に成り立っているのだよな、と思うと、日本との落差に眩暈をおぼえますね。

(初出「些末事研究」/再掲2010年3月10日・原文にあった宮沢章夫の日記への言及を削除した。((揚げ足取りでしかなかったので。)))