ある日の新聞広告

朝日新聞2005年4/26(火曜日)、14版2面に、光文社の広告が載っている。多分、新聞各紙に掲載されたであろう。右側の大きな部分は、『ホリエモンの新資本主義お金持ち¥三択ドリル』に当てられている(横幅約24cm)。その左隣に『朝鮮高校の青春』。その隣に『転職したいヤツに欲しい人材はいない』。その隣に『現実入門』(横幅約3.5cm)。後ろ向きにしゃがむ穂村弘が写真のなかで新聞の折り目の空白がある方をみつめている。非現実はこの折り目のあたりに重なっていて、成金や労働市場、マイノリティの政治問題といった現実におされつつも、非現実への窓は3.5cmくらいうすく開いている。『現実入門』は、実は非現実へと続く罠であって、非現実世界にある花荻窪へと穂村弘ファンを誘いこんでいるのだ。穂村弘が実在しないように、穂村弘ファンも実在しない。そしてかれらは、新聞の折り目のような事実のハザマに織り込まれた空白地帯に存在する花荻窪の町を今日もさまよっているのだ。24:3.5。現実に侵入できる非現実の割合は、このくらいだということを、新聞広告は教えてくれる。
Mixiから転載 2008年7月25日)